4th album 「その列車を止めるな」

その列車ジャケ_small


YouTube Music(無料)

 Apple Music >

Spotify >




LINER NOTES


「暗っ!」
この原稿を書くために収録曲一覧へ目を通した際、思わず口走った一言がこちらです。
まだ一秒も聴いてないのに文字情報だけでこのプレッシャー。
前作の3rd「決別のステーション」に引き続き、ライナーノーツ執筆を高松さん(Gt)から御依頼頂けたのは嬉しかったのですが、そんな嬉しさが裸足で逃げ出した上に転んで咽び泣く様な悲壮感溢れるこのタイトル共よ。

「ただでさえ生活苦しいのにこれ以上落ち込みたくねぇよ…。」
などと字面通りの暗黒音楽集であることを警戒しつつ再生ボタンを押すと…。
意外にも聴覚を満たすのは重苦しさではなく優しさや懐かしさ、そして人生のほろ苦さ。
そう、つまり、平常運行の秘密列車サウンドが二年振りに到着でございます。

今作は各楽曲における演奏とアレンジ面のクオリティの高さに加えて曲順も素晴らしい。
過剰なアップダウンを避け、聴者を丁寧に導いてくれる構成のおかげで、一切のストレスを感じることなく最後まで堪能できちゃいます。
その在り様を例えるならば、長年の信頼によって会話不要となった親友か女房か、はたまた静かなるバーのマスターか。
若者の若者による若者のための是が非でも立ち直らせようとケツを叩きまくる応援ソングに辟易してるあなたにピッタリ!

となると、疲れた体を心にぶら下げて飲む酒にこんなにも合うアルバムが他にあるだろうかという話になります。
私、前作のライナーノーツでも酒に合うって書いてるんですけど今作はそれ以上。
その理由なんですが、このアルバムには前作よりも更に“元気がない”んですよ!
バンド20周年というめでたいタイミングでのリリースとは信じ難いレベル!!
あんたら体調悪いのか!!?
しかも一時的な疲労って感じじゃなく、もうその状態が板に付いちゃってるとでもいいましょうか。
いえいえ、決して悪い意味じゃないんです。
その“元気のなさ”こそがこのアルバムを傑作たらしめているのですから。

聴けよオラ!と下品な主張をしない絶妙な距離感。
かと言ってお手軽な雰囲気BGMに成り下がることなどなしに、心地良く且つ強烈に生き様を放つ楽曲達。

悲しき全てを包み込むオープニングナンバー「羽根」
グルーヴを纏った過去への嘆き「最後のバスは行った」
平静を装う混沌「窓のない部屋」
アダルトなアンサンブルが忍び寄る「ヘッドライトオンザウェイ」
立ち込める正体不明の恐怖「赤い杜の記憶」
切ないロードムービーを奏でる「スリーピータクシー」
警告と奮起のブルース「その列車を止めるな」
諦められた救いの歌「底なしの海」
儚さに溺れるラストソング「半分動かない」
羽ばたきで始まり、雑踏に散る全9曲。
自らに襲い来る疲労さえも武器にしてしまった驚愕の癒しアルバム、皆様も乗車しようじゃありませんか。

話題は変わりますが、バンド20周年ですってよ奥さん。
そりゃあ…凄いですね。
20年あればおぎゃーと産まれた赤子がいっちょ前に成人しますからね。
オリンピックなら5回も開催できますし、Windowsなら98が10になります。
消費税も5%~10%に…ううぅ。
因みに何ら関係のない豆知識ですが、鍾乳洞は50年で1cm伸びるそうです。

私も音楽を嗜みますが、性格に難有りのため半分の10年だって同じバンドに居た経験はありません。
5年以上在籍したバンドもいくつあったかなってくらいです。
20年来のメンバーと共有する景色ってヤツを感じてみたいものですが、私の場合は大至急結成しても50代半ばになっちまうな…。

そう言えば、このアルバムのキャッチコピーに自分達を指して、
“人生折り返しの、さまざまな物語の伏線の回収、および終焉を意識せざるを得ないアラフィフ世代”
とありますが、歳を重ねると現実が余りにもヘヴィに圧し掛かってきますよね。

-夢の国に行くって言うけど 夢の国なんてないんだぜ-
(Tr.7その列車を止めるな)

そう!現実!!毎日毎時毎分毎秒、ただただ現実!!!
ここは苦痛苦悩に満ち満ちていて、だからこそ、それを忘れさせてくれる“何か”が必要になります。
その“何か”は人それぞれ違いますが、秘密列車の皆さんにとっては音楽、そしてバンドであったのだろうと。
そうやって吐き出された楽曲が更に誰かにとっての“何か”になったり、それを手に入れる切っ掛けになったりする。
そんな素敵なことがあったらいいし、あって然るべきだと思いを馳せながらこれを書いています。

9曲目のタイトルは「半分動かない」。
一見では悲しみのみ伝わってきますが、視点を変えると「もう半分はまだ動く」という希望が見付かります。
そして…この4th ALBUMのタイトルは「その列車を止めるな」。
そうさ、まだ止まっちゃいないぜ。
例え鍾乳洞が如くの歩みになろうとも、その列車を止めるな!ってことで、本作を堪能しながら5thも楽しみにしてます!

中村修人(usual name) 2019.9.3(→Twitter)






青木(Vo,G)による全曲解説


01.「羽根」
Lyrics,Music:青木
Vocal,Guitar:青木/Guitar:髙松/Guitar,Chorus:藤倉/Bass:横関/Keyboards:狩野M/Drums:狩野

若くして逝ってしまった友人へのレクイエム。
学生時代も卒業した後も私の一番の理解者でいてくれた。
彼のためにも一生音楽は辞めないと誓う決意表明であります。




02.「最後のバスは行った」
Lyrics,Music:青木
Vocal,Guitar:青木/Guitar,Chorus:髙松/Bass:横関/Keyboards:狩野M夫/A.Sax:早瀬/Trumpet:藤倉/Drums:狩野

ホーンセクションがアーバンな趣を与えるミドルナンバー。いつになっても付き纏う「人生乗り遅れた感」を憂いています。中間ソロを担う瞬君加入のキッカケになった曲でもあります。




03.「窓のない部屋」
Lyrics,Music:高松,藤倉
Vocal,Guitar:髙松/Vocal,Trumpet:藤倉/Guitar:青木/Bass:横関/Drums,Programing:狩野

何気ない日常に徐々に狂気が忍び寄るサイケデリックナンバー。前半の淡々とした物件情報から、突然サイケ色溢れる描写への転換が秀逸。狩野ちゃんのミックスも攻めててお気に入り。




04.「ヘッドライト オン ザ ウェイ」
Lyrics,Music:青木
Vocal,Guitar:青木/Guitar,Chorus:髙松/Bass:横関/Keyboards:狩野
Trumpet,A.Sax,Chorus:藤倉瞬
Drums,Programing:狩野文孝


巧みな言葉選びがお気に入りの脱力ファンク。レコーディングでは息継ぎ無い地獄に苦しめられた。肺活量を節約しながら歌う様が上手いことクールに決まってれば良いですが。




05.「紅い杜の記憶」
Lyrics,Music:青木
Vocal,Guitar:青木/Guitar:髙松/Bass:横関/Drums:狩野

あの日…原子力発電所の最深部にいたであろう人達と、何らかの利権の為に安全な場所から指揮をとる人達の対比。まるでどこぞの戦争の様です。
髙松さんのアバンギャルドなギターソロが狂気を表現しています。




06.「スリーピータクシー」
Lyrics,Music:青木
Vocal,Guitar:青木/Guitar:髙松/Bass:横関/Keyboards:狩野M/A.Sax:藤倉/Drums:狩野

神奈川の相模原に住んでいた頃、銀座からタクシーで2時間くらいかかりました。往復4時間、時刻は24時を回ってる。そんな運転手の横顔に悲哀を感じていたら、こんな物語が浮かびました。
ミックスも含め様々なアイデアが詰め込まれた実験的ナンバー。




07.「その列車を止めるな」
Lyrics,Music:青木
Vocal,Guitar:青木/Guitar:髙松/Bass:横関/Keybords:狩野M/Drums:狩野

何と私が高校時代に作ったブルース。30年を経て本アルバムのタイトル曲に抜擢されました。秘密列車20周年にピッタリのタイトルでしょ?もう久しく「Baby」とか言ってなかった。スリーコードって偉大!




08.「底なしの海」
Lyrics,Music:青木
Vocal,Guitar:青木/Guitar:髙松/Bass:横関/Keyboards:岡田/A.Sax:早瀬/Drums:狩野

「朝起きて雨が降ってたら死にたくなりませんか?」なんてMCでテレ隠ししながらよくライブで演奏してました。とにかく暗い曲。歌うと本気で落ち込むから極力演りたくない。
今は精神状態が健全なんでしょうかね。そんな問題作。




09.「半分動かない」
Lyrics,Music:青木
Vocal,Guitar:青木/Guitar:髙松/Bass:横関/Keyboards:岡田/A.Sax:早瀬/Drums,Chorus:狩野

奥様を津波に奪われた男性が、いつまでもずっと海を見ていた。そんな映像を見ました。体の半分が失われた様だと言っていた。そんな想いに寄り添ってみた曲です。





Mix,Mastering:狩野
Artwork: Boogie Graphix




YouTube Music(無料)

 Apple Music >

Spotify >




ジャケ

CDのご購入はこちら
Himi2 Records Shop >

アルバム発売記念 秘密列車メンバーインタビュー
#01 | 羽ばたきを探して >