秘密列車の作曲合宿にうっかり参加したら地獄だった件(後編)
#後編 | こんなことをほぼ毎年やってるなんて、一体何を考えているんだろう。

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秘密列車 秘密合宿2020レポート
2020.1.17(金)-19(日)
秘密列車の作曲合宿にうっかり参加したら地獄だった件(後編)

この10年間にほぼ毎年開催され、今年で8回目を数える秘密列車作曲合宿。
前記事(前編)では2泊3日の合宿初日の様子をご紹介しました。
当記事(後編)ではいよいよ2日目、本格的に始まる作曲大会の様子を余すところなくお伝え致します。
事前に皆さんから「肉体的にも精神的にも相当キツイ」と聞かされてた合宿本番。
果たして筆者の運命や如何に…。

取材・文 :中村修人(Usual Name)

参加者
秘密列車:  A(Vo,Gt)/T(Gt)/K(Dr)/Y(Ba)/F(Tp,Sax)/M子(Key)
ゲスト参加: 中村(Dr)←筆者/中村嫁(Key)
会場: 山中湖Sound Village

二日目~雪と油断と大暴走~


さあ、遂に始まってしまいました。
合宿本番の二日目でございます。
っと、その前に外を見ると…。
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雪、止む気配がありません。
これ、明日帰れるのか?
もし「もう一泊!合宿延長!!」
なんてことになったらと考え、ひとり恐怖した朝でした。

前回の記事でも触れていますが今一度、合宿のシステムをおさらいしましょう。

  1. 先ず参加者8名をランダムに3セット計8チームに別ける
  2. チームごとに、形容詞、ジャンル、歌詞テーマのそれぞれのくじを引き、お題が決定。演奏パートや得意不得意は考慮されず、クジの結果に従うのみ
  3. 2日目、朝食後から3チーム別々のスタジオに約3時間籠り、お題に沿った楽曲のデモを完成させる(これを2セット)
  4. 夕方から最後の1セットは4人ずつの2チームに別れて同じく約3時間内にデモを一曲完成(これを1セット)
  5. 21時以降は残業時間として、3時間で作業が終えられなかったチームが必要な時間を申請し、スタジオに入ることができる。

合計して8曲が生み出されることになります。

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私(中村)の班とお題
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第一課題 10:00~14:00
お題:“黒い”“Funk Rock”“ゴミ箱”
チーム:M子氏,中村

第二課題 14:00~17:00
お題:“酔っ払った”“Ballad”“夫婦”
チーム:T氏,中村嫁,中村

第三課題 17:00~21:00
お題:“ゆるやかな”“Folk Rock”“雪”
チーム:Y氏,T氏,F氏,中村

※第一と第三が4時間なのは途中に昼食と夕食があるため

実際に制作された楽曲は当記事《最終日》の項にてお聴きになれますので、先ずは制作の様子をお楽しみ下さい。



【第一課題】10:00~14:00
お題:“黒い”“Funk Rock”“ゴミ箱”
チーム:M子氏,中村


前日の打ち合わせにて「ゴ〇〇〇の歌は嫌」とM子氏から指示を受けたにも関わらず、結局それ以外に何も思い付かず朝を迎えた私。
どれだけ〇キ〇〇に思い入れがあるのかと。
M子氏にはせめてもの贖罪として、ストレートに“〇〇ブ〇”とは言わない歌詞を書くことでご了承頂きました。
また、作曲合宿未経験者タッグである我々は、クオリティがどうのよりも“しっかりと楽曲を完成させる”ことを最優先とし、そのためには手段を選ばないことで同意しました。
というわけで無料素材を楽曲の骨子に据えて素早く型を作ってしまい、余った時間でシンセや歌によって出来合い感を可能な限り消し去るよう試行錯誤を重ねました。
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結果、2時間ほどで全て完了。
しかし…M子氏の秘密列車作曲合宿の歴史は〇〇〇リの歌と共に幕を開けたのかと思うと、非常に居た堪れません。




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食事は、作業を一旦中断し、皆で食堂で食べます。
ひとときの休息。
サウンドビレッジさんの食事は本当に美味しく最高です。



【第二課題】14:00~17:00
お題:“酔っ払った”“Ballad”“夫婦”
チーム:T氏,中村嫁,中村


前半記事にて楽勝と見込んでいた第二班。
その予想は、これ以上なってくらいの大外れでございました。
第一班がスムーズに行き過ぎて気が抜けてしまい、こちらでは何も思い付かずただただ時間を浪費する私。
同様に、この曲の歌詞を書き上げたところで力尽きてしまった嫁さん。
完全な役立たずと化した中村家を必死でカバーして下さるT氏。
コード進行を決め、大まかな展開を決め、こんなんでいいのか?っていうふんわりした仮歌を入れて…あれ?もうタイムリミット?
ということで第二班は絶望と共に終了時刻を迎えたのでした。



【第三課題】17:00~21:00
お題:“ゆるやかな”“Folk Rock”“雪”
チーム:Y氏,T氏,F氏,中村


このチームも前半記事にて楽勝と踏んでいましたが…こちらは予想的中。
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作業開始時刻キッカリに全員集合したかと思えば、Y氏とT氏とF氏がお題に最適であろうコード進行を早々と決定。
「じゃあ俺が作詞と歌メロの担当ですね。書いてきます。」
と言って、颯爽とスタジオから姿を消した完全なるイケメンF氏。
何もしなくて良さそうだと感じた私は、第二班のこさえた負債を忘却すべく、一心不乱に鼻糞をほじってました。
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一応はドラム叩いて、全パートのレコーディングを担当しましたが本当にそれだけで、ミックス作業はY氏が抱えて下さいました。
ドラムを録る際にF氏から、曲のアウトロで派手に暴れるよう指示があり、「緩やかな曲にしないといけないのに大丈夫なのか?」
と疑問を抱いたものの、あとのお二人も「そうだやれやれ」と仰るので程々にやりました。
最初のテイクでは暴れすぎて見事に拍をロストし、恥ずかしい思いをしたのは今となっても恥ずかしい思い出です。



【残業時間】21:00~0:00

間に合わなかった作業をすることが許されている貴重な時間、それが残業時間。
いくら第二班以外の楽曲は完成していようとも、その第二班の打つ手なし感たるや。
お先真っ暗な気分でスタジオに一人で入り、明日の地球爆発を夢見ていたのですが、ふと思い立ったのです。
せっかく自分は外部からの参加者なんだから、秘密列車の皆さんが絶対にやらないことをしてみようと。
それでドン引かれてみるのもまた一興なんじゃなかろうか。
嫁さんもT氏も別班の作業に残業時間を充てたため、このスタジオには私一人だけ。
これ幸いと変なドラム入れて、変な歌入れて、変なミックスにして、ゲヘヘ。
さてさて、他班も含めてどんな楽曲がひりだされたのでしょうか?
そもそも完成まで漕ぎ着けることができたのでしょうか?
合宿最終日の明日、全てが明らかになります。

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最終日、合宿曲発表会~応えは沈黙~


【撤収準備&会計】最終日9:00~10:30
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雪は止み、帰宅は可能との報せ。
これで死なずに済みます。
キッチリと各々の荷物をまとめて、迅速に退出できるよう備えます。
目立ったトラブルもなく片付けは進み、清算や支払も完璧に済ませておく大人っぷり。
忘れ物もございません。
 


【合宿曲発表会】最終日10:30~11:30
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安全な帰宅のためタイヤチェーンも付け終わったらいよいよ発表会の始まり始まり。
では、私が関わった3曲はどうなったのか、皆さんの反応と共に振り返っていきます。
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1.Black Night From Dust Box
お題:“黒い”“Funk Rock”“ゴミ箱”

チーム:M子氏(key,Cho),中村修人(Vo,Per)
作詞:中村/作曲:中村

評価:ギリギリ合格
視聴会ではM子氏の「ブラーック…」というコーラスで笑いが取れたので手応えを感じました。
しかし、これはFunkではあるけどRockの成分が足りていないという大変最もな指摘を受け、
「Funkの平均的なBPMよりも早いから許して下さい!」と泣き付くことで事なきを得ました。
楽曲自体は好評、骨子が無料素材であることは事前に周知したのですが、そこも全く気にならなかったとのこと。
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2.冬は、もう
お題:“酔っ払った”“Ballad”“夫婦”

チーム:T氏(Gt,Ba),中村嫁(Pf),中村(Vo,Dr)
作詞:中村嫁/作曲:中村,T氏

評価:不能(多分、合格)
いやね、皆さん無言になっちゃったんですよね。そりゃあドン引かれようと思って編曲しましたけど、失笑されるくらいが理想だったんで、ここまでの静けさは私の心に傷ですよ。
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でも、誰が聴いてもバラードではあるだろうし、酔っ払い感を出すために急激な展開をしたり変なドラム入れたし、歌のピッチも不安定だし、歌詞にも“酔う俺は”ってあるし…大丈夫だんべ?
この時まで完成版を聴いていなかったT氏が一番驚いていたのが印象的でした。



3.六花
お題:“ゆるやかな”“Folk Rock”“雪”

チーム:Y氏(Ba),T氏(Gt,Cho),F氏(Vo,Gt),中村(Dr)
作詞:F氏/作曲:F氏,Y氏,T氏

評価:当然、合格
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発表会の時、ろくに関わってないくせして「うわーかっこいい!この曲かっこいいな!」ってはしゃいで申し訳ありませんでした。
かさばるので誰もアコギを持ってこなかったからフォーク成分は薄いですが、ないもんはしょうがない。



他チームの楽曲も聴いてみましょう。

スイッチディスティネーション / K氏,F氏
お題:“瑞々しい”“ヴィジュアル系”“スイッチ”

評価:満場一致の合格
「超ウケる。瑞々しいヴィジュアル系なんてどうやるんだよ。完全に南無三だろ。」
そう思っていた私ですが、ぐぅの音も出ない程に叩きのめされました。
“インディー盤が切っ掛けでメジャーデビュー、すぐにアニメのタイアップが付くも以降全く音沙汰のないヴィジュアルバンドっぽさが超リアルで最高!
K氏とF氏、どっちがより変な癖をつけて歌えるか競いつつレコーディングしたらしいのですが、その状況を生で見たかった。
きっと腹がよじれて千切れるところだったでしょう。



実験曲 / Y氏,F氏,中村嫁
お題:“オシャレな”“実験音楽”“時計”

評価:拍手喝采の合格
「超ウケる。オシャレな実験音楽なんてどうやるんだよ。完全に南無三だろ。」
そう思っていた私ですが、思わず泣きそうになるくらい感動してしまいました。
しかも“どの程度なら歌詞をばらしても意味は通じるのか”という、ちゃんと実験をしているんです。
ただただわけの分からない音楽にしても実験音楽とは言い張れるのに…。
因みに実験音楽というお題をクジに入れたのは私です。
大変申し訳ありませんでした。



その他合宿課題曲はこちら

フルバージョンはこちら
秘密列車Youtubeチャンネル >

 


【記念撮影&撤収】最終日11:30~12:00

さあ、帰宅だ。
ありがとう、山中湖Sound Villageさん。
スタッフさんが親切、部屋もキレイ、スタジオも使い易い、食事も美味い、つまりは最高でした。
もしまた来れるなら、過酷な企画じゃない時に。
さて、何か総括を述べてキレイに風呂敷を畳みたいところですが…困ったことに何にも思い付きません。

出てくるのは「疲れた」の一言のみです。
嗚呼、本当に皆さんの仰られた通り、精神的にも肉体的にもキツかった。こんなことをほぼ毎年やってるなんて、一体何を考えているんだろう。

この分だと来年もあるっぽいんですけど、また誘われたらどうしよう…。
あ、何か来年のその頃は風邪を引いて夫婦共々寝込んでいる気がします!
俺のそう言うの当たるんで!スッゴく当たるんで!

少し真面目な話に切り替えますと、“何とかする”ってのは大変なことなんです。
合宿中、皆々様が幾度となく口にし、そしてされた“何とかする”や“何とかなる”という言葉。しかし実際そうするには、それが可能なだけの知識や技術や要領が必要になります。

秘密列車の皆さんは漏れなく“何とか”してしまいました。そしてメンバー全員がそれを可能なだけの能力を持ったバンドが、プロフェッショナルではなく趣味人の集いであることにふと気付き、戦慄するのでありました。

最後に改めて申し上げたいのは、ここで生み出された楽曲は全てデモの段階であるということです。
これらは、合宿とは正反対にゆっくりと時間を掛けて磨かれ、やがて正規の作品として公開されるでしょう。
私はその時を楽しみに待とうと思います。

ここまでお付き合い下さり、誠にありがとうございました。

取材・文 :中村修人(Usual Name)

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#前編はこちら >
#前編 | 初日は飲める 初日は寝られる

 


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