8th album 「開かずの踏切」(2025)

活動26年。吉祥寺発オルタナロックバンド「秘密列車」渾身の8thアルバム、ここに爆誕。
8枚目にして全曲ロック──
今、原点ロックに全力回帰。クラッシックロックへのリスペクトとオマージュを盛り込みながらも滲み出る唯一無二の「秘密列車サウンド」
自由と解放、演奏すること、創作することの喜び。
解き放たれるように、シンプルに。これが「秘密列車」の今だ!
LINER NOTES
ネガティブなテーマをポジティブに、いきいきと奏でる。
閉塞感の中にある開放感。これが今の「秘密列車」
文:Watasino
なんだ、この閉塞感は。いや、開放感なのか。秘密列車、8thアルバム『開かずの踏切』である。
本作のテーマは、ずばりロックへの回帰だ。純粋なバンドサウンド主体の作品としては、2019年の4th『その列車を止めるな』以来、実に6年ぶりとなる。伝え聞いたところによると、5th『エレクトリック線路WAY』から始まった電子音路線に、青木がしびれを切らした事が発端らしい。
そもそも秘密列車は、クラシックロックやニューミュージックをルーツに持ちながら、アシッドジャズとファンクを音楽的なスタートとしている。そこにGtの高松が加わったことで、様々なジャンルへの挑戦が始まり、現在のような多様な音楽性に至った経緯がある。つまり、本作のような正面からロックに向き合ったアルバムというのは、これまでなかったのだ。シンプルかつストレートでありながら、異色な作品なのである。
全8曲のうち6曲がVo/Gtの青木の作詞曲。これまでのバンドのシステムから考えても、秘密列車というより青木のソロに近く、結果として、これまでになく一貫性と力強さを兼ね備えた作品に仕上がった。
本作において象徴的なのは、3部作の『サイケデリック ガムテープ』、そしてタイトルトラックとなる『開かずの踏切』だろう。
『サイケデリック ガムテープ』について。サイケデリックガムテープとは???という感想がまず浮かぶと思うが、これは先述のシステムにより「サイケデリックなガムテープ」みたいなお題が出たものと推測される。まんまですね。そして普通はこのお題から3部作にはならない。お見事。
いずれの曲も曲調は異なっているが、歌詞の面ではガムテープで塞ぎ巻かれるモチーフと、開かない踏切の閉ざされた世界観は同根である。
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塞いで塞いで 塞いで直ぐに
塞いで塞いで 君のガムテープで
M1『サイケデリック ガムテープ Part 1』
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ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる
あと何度巻かれても
暗闇の向こうから君の声がする
『サイケデリック ガムテープ Part 2』
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がんじがらめにして
僕の世界を閉じ込めるんだ
がんじがらめにして
君のガムテープで
M7『サイケデリック ガムテープ Part 3』
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遮断機が今目の前に降りてきて
その先の未来が見通せない
僕の命を守る為に
色んなものが僕を遮る
M2『開かずの踏切』
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塞ぎ、巻き、閉じられる。それを甘んじて受け入れる精神性は、アルバム全体へと波及していく。
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愛してるって言っても いつも黙ってる
僕らの時間は ずっと止まったまま
M3『タイムマシン』
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あなたの中の優しさが
僕に絡みついて離れない
留まる事のない波となり
全てを押し潰した
M5『MOTHER』
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ポケットの中にいつも
暗闇へのチケット
騒めく夜が口開けて
僕を待っている
呑み込まれてみたいな
ずっと奥まで
M6『暗闇へのチケット』
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ふたりなのにアローン
僕はロンリネス
M8『君とモンブラン』
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なんというか、暗い。青木以外の作詞(『タイムマシン』と『君とモンブラン』)にまで閉塞感がある。苦しい。
開かずの踏切に道を遮られている。閉じ込められてしまっている。いや、踏切が開かないのであれば迂回すればいいじゃないか、道は他にいくらでもある……なんて、野暮なことを言ってはいけない。
「好きでやってんだからほっとけ!!」
これはそういう作品だ。なぜなら、青木のノリが過去イチと言っていいくらい素晴らしいから。
M1『サイケデリック ガムテープ Part 1』の軽快さとシャウト。M2『開かずの踏切』での伸びやかな声とギターソロ。M4『サイケデリック ガムテープ Part 2』のゆらゆら帝国からの引用。そしてM7『サイケデリック ガムテープ Part 3』からあふれるジョン・レノンへの敬愛。これらの曲は、彼の本来の素養が存分に発揮されており、実に伸び伸びとしたプレイを感じ取ることができる。ネガティブなテーマをポジティブに、いきいきと奏でる。閉塞感の中にある開放感。陳腐な言いかたになってしまうが、これは紛れもなくロックだと思う。
青木以外にトータルで参加しているのはBaの横関とDrの狩野である。この3人のロックサウンドをベースとし、その他のメンバーが加わることで楽曲に様々な幅が出ている点にも注目したい。高松のギターによる空間演出とジャジーなアウトスケール。麻紀子のコーラスとさり気なく彩るキーボードワーク。早瀬の色気と狂気に満ちたサックス。これらが合わさった時、青木・横関・狩野の3人だけでは得られないバンドマジックを確認できる。
最初に青木のソロに近いとは書いたものの、やはりこのアルバムで鳴らされるサウンドは、秘密列車というバンドそのものなのである。むしろ、秘密列車とはどのようなバンドなのか尋ねられたら、このアルバムを聴かせるのが一番早いかもしれない。それくらい「バンドの面白さ」みたいなものが、分かりやすい形で現れている作品なのだ。暗いけど。でも、かっこいい。筆者が最初に好きになったロックも、そういうものだったよ。ロックンロール!
Watasino (2025.9.20)
恒例! 青木(Vo,G)による全曲解説
01.「サイケデリック ガムテープ Part 1」
Lyrics,Music:Aoki / Arrangement:秘密列車
Vocal,E-Guitar,Keydoards:Aoki / Drums:Kano / Bass:Yokozeki
秘密列車では珍しいスピード感溢れるロックンロールナンバー。やっぱりロックは3コードが最強!ナンセンスな歌詞も最高!50代にしてバンド史上最速張りのBPM!そして老体に鞭打って頑張るドラマー!ほんとごめん!魔の抜けたオルガンがいい味出してます。
02.「開かずの踏切」
Lyrics,Music:Aoki / Arrangement:秘密列車
Vocal,E-Guitar,Programing:Aoki / E-Guitar : Takamatsu / Drums:Kano / Bass:Yokozeki / Keyboads: Makiko / Sax: Hayase
アルバムタイトルを飾るミディアムロックナンバー。ただでさえあれダメこれダメが蔓延して息苦しい世の中。ダメなのは貴方のためだからと諭してくる社会。そこへのアンチテーゼと社会的・肉体的に死を覚悟できないジレンマ。大団円のエンディングは必聴!
03.「タイムマシン」
Lyrics,Music:Aoki / Arrangement:秘密列車
E-Guitar,Programing:Aoki / E-Guitar : Takamatsu / Drums:Kano / Bass:Yokozeki / Keyboads: Makiko / Sax: Hayase
何やら倦怠気味の二人を描いたラブソング。それでも切ないのはまだ愛しているからでしょうか。ポストシニア世代にはに深く刺さります。イントロから既に名曲の気配。そしてサビでノックアウトされる事間違いなし!タイムマシンなのに過去にも未来にも行けません。
04.「サイケデリック ガムテープ Part 2」
Lyrics,Music:Kano / Arrangement:秘密列車
E-Guitar,Programing:Aoki / E-Guitar : Takamatsu / Drums:Kano / Bass:Yokozeki / Keyboads: Makiko / Sax: Hayase
箸休め的に短いサイケデリックナンバー。時間も空間も曖昧な閉鎖空間。ガムテープでグルグル巻きにされた男の話です。オルガンの気持ち悪い裏メロが気に入っています。
05.「MOTHER」
Lyrics,Music:Yokozeki,Kano,Makiko / Arrangement:秘密列車
E-Guitar,Programing:Aoki / E-Guitar : Takamatsu / Drums:Kano / Bass:Yokozeki / Keyboads: Makiko / Sax: Hayase
背筋が寒くなる様な母子関係を表現したホラーなフォークブルース。母親の中に潜む狂気と子供の中に潜む愛憎。誰もがボンヤリと、又は明確に感じた事があるはず。各パートがギリギリで交わらない狂気的な演奏と帰結しない進行。その他実験要素も満載です。
06.「暗闇へのチケット」
Lyrics,Music:Takamatsu / Arrangement:秘密列車
E-Guitar,Programing:Aoki / E-Guitar : Takamatsu / Drums:Kano / Bass:Yokozeki / Keyboads: Makiko / Sax: Hayase
往年のブルースロックですが、秘密列車風に一捻りしてあります。色んな恐怖でなかなか一歩先へ踏み出せない感情。まるでポケットの中で使えないチケットみたいですね。遠回しの言い訳ですね。エンディングのスピード感溢れるギターソロが最高!
07.「サイケデリック ガムテープ Part 3」
Lyrics,Music:Yokozeki / Arrangement:秘密列車
E-Guitar,Programing:Aoki / E-Guitar : Takamatsu / Drums:Kano / Bass:Yokozeki / Keyboads: Makiko / Sax: Hayase
ガムテープ3部作の最後は壮大なバラード。恥ずかしげもなくビートリーな逆再生やストリングスアレンジ。何に縛られようが心の中は自由!という叫び。ジョンが見え隠れしますね。あくまでリスペクト故のオマージュです。
08.「君とモンブラン」
Lyrics,Music:Aoki / Arrangement:秘密列車
E-Guitar,Programing:Aoki / E-Guitar : Takamatsu / Drums:Kano / Bass:Yokozeki / Keyboads: Makiko / Sax: Hayase
ラストを飾るのは若々しいストレートなギターロックナンバー。どこまでもシンプルだからこそ奥深い。ギターのレコーディングはヤングの様に燃えましたね。ところでこの物語の主人公はなんでそこまで彼女の土産話が嫌なの?スッゴい嫌がり方だよね。なんで?わかんない。




